
「耳が聞こえないからと言ってお母さんは悲しいとか、恥ずかしいと思ったことはないよ。耳が聞こえないからと言って何もしないで逃げてばかりいたり、人に甘えてばかりいて人の気持ちのわからない心の障害者になる方が恥ずかしいと思っているよ」と、話してやりました。一週間ぐらいは毎日、部屋にとじこもり、悩んでいましたが、また、明るい元気な良樹にもどってくれました。そのとき私は、私の心の支えにしてきた言葉を息子に話してやりました。
「恵まれないからと、不足をいうよりも、与えられたものに感謝しよう」と。
このとき良樹の中で何かが変わったような気がしました。またこのころから、良樹は兄をとても尊敬し、何でも兄と同じようにやりたいと思うようになっていました。そんな弟をいつも優しく可愛がり、ときには親の私たちがびっくりするほど厳しく叱ったりと、愛と慈しみを持って本当に仲よくしてくれました。そんな兄を良樹はいまでも尊敬してはいるものの、ちょっぴり煙たい存在でもあるようです。
中学時代は、精神的にも肉体的にも一番成長した時期だったように思います。中学に入学して何日も経たない中に、次から次へと問題が起きました。友だち(健聴者)との関係、先輩との関係、先生との意見の違い、クラブ活動で……。と。でも、そのときそのときを親子で話合い、ときには意見のくい違いから勉強はそっちのけで夜中までやりあったことも再々ありました。
息子は自分の思いを日記にぶっつけ、それにきちんと先生が対応してくださったことで人の
前ページ 目次へ 次ページ
|

|